高宮マキ・ゴールデン☆ベスト

高宮マキ・ゴールデン☆ベスト 絲遊の女〜いとゆうのおんな〜
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ベストアルバム

2015.01.28発売
UPCY-6964 ¥2,057(税込)
レーベル:VIRGIN RECORDS
発売元:ユニバーサルミュージック合同会社

1.Blue Butterfly
2.WE NEED SOMEBODY
3.鱗
4.WOMAN
5.鍵穴
6.熱帯熱病
7.シュークリーム
8.WANNA LET YOU KNOW
9.私という球体
10.シンディー
11.Love
12.情熱萌え秋桜のWaltz
13.Ocean Sky
14.Miss Salt & Suger (月ペンVer.)
15.Love Letter

【ライナーノーツ】
ロンドンで暮らしていたときにインディーズで出した「Blue Butterfly」を経て、高宮マキが東芝EMI Virginからミニ・アルバム『鱗』でメジャー・デビューしたのは2002年11月。翌2003年1月発表のシングル「鍵穴」に続き、3月には傑作1stアルバム『鳥籠の中』を発表。1年後の2004年3月に2ndアルバム『Always be there』を発表した。だがその後、訳あってメジャーを離脱。3rdアルバム『Mariposa』がインディー・レーベルからリリースされたのは、2ndアルバムから3年が経った2007年3月のことだった。3rdアルバムを出した頃、彼女は「普通の生活をしたくなって」OLとして働いていた。その後L.A.で1年ほど暮らし、帰国後再びOLに。やがて一児の母となり、しばらくは子育てに専念した。「もう一度歌いたい」という気持ちが湧きあがってきたのは2010年頃。高宮は信頼する友人、大山泰輝(p,key)、沼直也(dr)、彼女の全作品のプロデュースを手掛けるクマ原田(b)と共にバンドを結成した。それが月ペンで、2012年4月にアルバム『TSUKIPEN Part1』を発表。ロンドンに住むクマ原田が帰国した際にはライブも行なった。実はメジャーで作品を発表していた当時、所属事務所の方針から高宮はほとんどライブ活動をしないでいた。が、月ペンでライブを何度かやるうち、彼女は人前で歌うことの楽しさ・喜びに改めて気づき、もっと自由にいろんな人たちとライブをやりたいと思うようになった。そうして本格的にソロでライブを始めたのが2013年。ライブの数を増やしていくなかでいくつもの新しい出会いがあり、徐々に動員も増え、彼女はライブ・シンガーとしての自信をつけた。2014年は高宮のキャリア史上、最も数多くライブを行なった年となり、そのなかには3月末の『鳥籠の中』全曲再現ライブもあった。リリース当時はライブをしていなかったので、いつかこのアルバムの曲を丸ごとライブで歌うことを夢見ていたのだ。それほど『鳥籠の中』は彼女にとって思い入れの強い作品だったわけだがしかし、このメジャー1作目と2作目は何れも既に廃盤になっていた。ライブ活動が波に乗った今、当時の高宮マキを知らずに観に来てくれる人たちにも、なんとかそれらのアルバムを聴いてもらいたい。再発が叶わないにしても、どうにかそれらのアルバムの曲を盤に入れて届けることができないか。そのような切なる思いから始まり、遂にそれが形になったのが、この初のベスト・アルバムだ。選曲と構成は高宮自身によるもの。1曲ずつ彼女にコメントしてもらおう。

1.Blue Butterfly「初めて書いた曲。当時結婚したいと思っていた人がいたけど別れてしまった。悲しい言葉しか浮かばなかった」。2.WE NEED SOMEBODY「初めてコーラスワークに凝って作った曲」。3.鱗「演歌とネオソウルの融合を目指した」。4.WOMAN 「このへんから歌詞に“強い私”が出てきた」。 5.鍵穴「自分のなかの女っぽい部分をもっと出してもいいかなと思って」。6.熱帯熱病「“熱さに眩暈がするたび 私病気かと心配するの”という歌詞が好き。私ってこんな感じだなって」。7.シュークリーム「ロンドンのスタジオで初めてクマさんと共作した曲」。8.WANNA LET YOU KNOW「別れた人への未練がやっと吹っ切れて、“誰か私を愛してよ”って感じに変わったのかな」。 9.私という球体「死について考えながら書いた曲」。10.シンディー「暮らし始めた彼の部屋に元カノの香りが残っていて、それを感じながら生活している私はドラマの主人公みたいだなってヘンな気持ちになりながら作った」。11.LOVE「洋楽のポップスみたいな曲を作りたかった。ギタリストの田中義人さんとのコラボ曲」。12.情熱萌え秋桜のWalts「彼と過ごす夜はいつも蝋燭を灯していたんです」。13.Ocean Sky「大好きだった友達が亡くなってしまって書いた曲」。14..Miss Salt & Sugar「2ndアルバムにディスコ・アレンジで入れた曲を、もっとレイドバックさせた感じでやろうと作り直した」。15.Love Letter「昔の恋愛を思い返している冷静な自分。“不器用だったな、私”って。“君がいつの日か大人になったら”の“君”は私の子供のこと」
ただのベスト盤にあらず。2002年から2012年にかけての代表曲が発表順に並べられたこの作品は、高宮のその10年の生きた証だ。臆病だった彼女がいくつかの激しい恋愛をし、女として生き、母親になり……。曲を選んで並べながら、恐らく彼女は自身のフォト・アルバムのページをめくっている気持ちになったことだろう。タイトルは『絲遊の女』。“いとゆう”とは早春や晩秋の頃、空中に蜘蛛の糸が浮遊する際、その糸がゆらゆらと光って見える現象のこと。地面から炎のような揺らめきが立ちのぼる“陽炎”と同意だ。通して聴けば、高宮マキという女の熱情が、まさに揺らめきながら立ちのぼってくる。(内本順一)